保証期間中でも普通の故障は保証対象外です。
皆様、ご機嫌はいかがでしょうか。
先日、同業の方より「ビルフィッシュトーナメント」の参加のお誘いを受けました。
日本語でいうと「カジキ釣り大会」ですね。
昨年、一昨年も都合がつかず参加できなかったのですが
今年は頑張ってお手伝いしてきます。
長距離航行は昨年5月のSeaRay370回航以来ですし
(いつもは船外機セット後の小一時間の試運転ばっかり)
ビルフィッシュに至っては20年以上ご無沙汰です。
ワクワクしますね~潮っ気の充電ができますね~
楽しみが増えました。
さて、メールのお問い合わせがありまして
Tohatsu MFS2Cを他店の通販で買って故障したが
保証期間中なので保証で直してほしいとの内容でした。
パイロット店なのでトーハツ船外機の修理はしますが
期間中であっても保証になるかは故障状況次第です、と
返信を打っていたら直接電話がありました。
私が出張中で返信できなかった間にメーカーさんなどに
電話したそうですが、同じことを言われたそうで・・・
後日持ち込まれたのですが、MFS2C用ではないキャブレターが付いていたので
一旦対応をお断りしましたが、一旦お帰りになって
MFS2C用のをお持ちになったので、受付させていただきました。

これ、海上保安庁さんに発覚すると、クルマに例えると
無免許運転+無車検車運行の非常に厳しい罪になります。
私、巻き添えになって船舶免許が無くなると商売できなくなるので
こういうのは持って来ないでください。
故障内容は「沖でエンジンがSTOPしてカウルを開けたら
湯気?白い煙?が出ていた、少し時間をおいて冷ましてから
再始動できたのでゆっくり休憩しながら帰ってきた」という内容です。
「改造されていた時点で保証修理の対象外です」
「分解してみないとわかりませんが、たぶん通常故障だと思います」
と、お話し、ご了承の上お預かりしました。
現状確認の為、恐る恐るエンジンを掛けます。

何度かリコイルしてエンジンがやっと掛かりました。
予想外ですが、検水口から水がでてきました。
但し、暖気が終わって回転を下げたら、ポタポタ的な出方に代わったので
水が少ないのは間違いないですね。
このエンジンは確か50℃でサーモスタットが開き始めて
60℃で全開だったと思うのですが、それを超えてぐんぐん上がるので

焦ってエンジンを急停止しました。
完全に故障決定です。
後は、故障個所の特定と、メーカーさんが組立ミスや
悪い部品を使っていたか否かの確認です。
(改造していたので保証修理はできませんが念のため)
オーナー様が勝手に増設していた燃料フィルターですが
たぶん、オーバーヒートの熱で変形しています。

2馬力は船舶検査の対象外ですが、検査対象だったら
不合格案件です。
メーカーが「改造をしてはならない」と言う事の良い(悪い)例です。
これ、熱でもっと変形し、ガソリンが漏れて沖で引火していたらと思うと
ゾッとします。
メーカーはJCI(日本小型船舶検査機構)やその小型船安全規則、
USCG(アメリカ沿岸警備隊)の安全基準を十分クリアするように
耐熱性、耐火性、耐油性などを考えて材料を選択、設計されています。
なので、自分で自分を守るため、改造はしないでくださいね。
エンジンオイルの注入口キャップが熱で変形しています。

かなり熱くなったと思います。
エンジンの停止スイッチのコードが溶けてシリンダーブロックに
くっついていたので剥がして、外皮チューブを割いて中を確認します。

トーハツさんが熱対策で二重にされていたのが功を奏して
中の線は軽く溶けただけで済みました。
これ、単皮で溶けて2つの線がくっついたり、ボデーとくっつくと
エンジンが掛からなくなるので大切な部分なんです。
次はエンジンが左右に首を振る部分に緩衝材のようなベアリングのような
役目で入っているプラスチックのピボットブッシュ上下ですが
高温になった排気熱でドロドロに溶けていました。

あまり見たことが無いので、かなり高温になったのでしょうか?
エンジンから外してコップに水とともに入れゆっくりお湯を
足していきながら弁の開閉テストをしたサーモスタットですが、
70℃近くになっても開きませんでしたので
高熱を食らって死亡しているようです、南無・・・

このサーモスタット、ボデーは銅からステンレスに
進化していましたが、9.9などと違って
死亡時は「開き死亡」ではなく「閉じ死亡タイプ」
なのかもしれません。
どちらにしろ設定温度で作動しないのでアカンやつです。
最後にギヤケースをはずして冷却水のウォーターポンプを
確認します。
摩擦熱(他の熱はここでは発生しない)でインペラーの羽根も
熱炭化?して固くなって縮んだようになっています。
ポンプボディーも熱で溶けて変形しています。

私は現地にいなかったので、エンジン運転や分解をしての、
これらの状況からの推察ですが、
1,何らかの状況でポンプに水が来なくなった。
(ゴミのひっかけなどが推測されますが、証拠はありません)
2,水が来ないため、インペラーとポンプのボディーが摩擦熱で溶けて性能低下。
3,水の上りが減り、あまりに高温になったのでサーモスタットが死亡
4,少しの水は上がるが、サーモスタットが開かないので
シリンダーブロックの冷却が出来ずに超高温になった。
5,プラスチック部分も溶けてしまった。
と、推察いたします。
この状況は、よく見るゴミひっかけ又はバケツ運転でのミスで
オーバーヒートさせてしまった他のケースとそっくりです。
なお、私が分解した部分についてはメーカーの組立ミスなどは
見つかっていません。
上記をお電話で説明し、ご了承を頂きまして部品発注いたしました。
これ、改造で保証の放棄をしていなくても、
保証修理にはならなかったですね。
心配されていたメーカーさんと、通販で販売したお店に連絡しておきました。
あとは部品が届いて組み立てて、長めに試運転してみて
問題なければとりあえず完成です。
とりあえずと言ったのは、これだけ高熱を食らっているので
何か後遺症が出るかもしれません。
予算無制限なら、ネジ1本までばらして確認しますが
お客様にも確認しましたが、そこまではお望みではないので・・・
私がオーナーでもそうします。
内燃機関なので、高熱を食らうと部品がひずんだり
伸びたり、油膜が切れたりして摩擦が起こり
一気に加齢するかもしれません。
皆様、検水口(パイロットウォーター)はたまに確認するために
小便小僧のようにシャーと出ています。
航行中は度々の確認をお願いしま~す。
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