BF130AXの故障診断は2名で行います。
皆様、ご機嫌はいかがでしょうか?
昨日ワタクシは、以前からお聞きしておりました、
6~7年ほど前に修理をさせていただいたことにある
BF130AXの出張修理に行ってきました。
唯一わかっている症状は「ショックを与えるとエンジンが停止する」です。
朝の4時に家を出発し、途中で助っ人のAさんを載せて
現地に向かいます。
目的地は老舗の造船所で、オーナーはそこにボートを
預けておられます。
現地に付くと、すでに他のボートオーナー様が居られ、
「あのボートは2度漂流した、治るンかいな?」と・・・言われました。
早速Aさんと手分けして点検を開始します。
油水分離機に水やゴミが溜まっていました。
油水分離機を掃除したあと、プライマリーポンプをニギニギして
ガソリンを送ろうとしても全然燃料が吸えません。
手がツリそうになってAさんと交代、
でも、上がってきません。
たまたま予備で持っていたHonda新品に変えたら、
すぐに上がってきました。
お次はベーパーセパレーター内のガソリンも確認します。
細かなゴミが出てきますが・・・水は入ってませんでした。
スパークプラグは、そこそこの焼け具合でした。
次に電気系統の、カプラーやコードの取り付けの緩みや
ヒューズ類を目視点検していきます。
バッテリーの接続も、同様です。そして・・・
「エンジンよ、掛かるな、掛かるな」と念じながら
キーを回すと、エンジンがスッと、何事も無かったように掛かりました。
これで修理の手がかりが、無しみたいなものです。
掛けてすぐ、検水口からの水がポタポタで、一旦止めて
分解して貝殻を掃除し、再始動した写真です。
燃料系の点検掃除部品交換とこの検水口で
ボートとクルマの往復を、桟橋を渡って100mほど、
すでに5往復ほど・・・時間も2時間ほど経過しています。
今日中に終わるかな・・・
燃圧を測ります。
暖気後のアイドル、空ぶかしの瞬間、高回転など
いろんな回転での落ち込みを確認します。
少し弱めで、高圧燃料ポンプを交換したいのが本音ですが
現時点で交換しないとダメというわけでも有りません。
BF130AXは1998年に世に発表されました。
世界初のEFIの船外機でした。
このエンジンは発表当時の初期のものです。
隣に係船しているボートオーナー様が聞くので
「20年前のエンジンです。」と言うと、
「2ストか~4ストやと思っとったわ」
いえ、4ストです。たしかに少しタペット音が鳴ってますが・・・
「ああ、持って帰ってバルブをスルスリしたい」
「ピストンリングを交換したい」
「メタルを交換したい」
さらにEFI=電子制御式燃料噴射方式なのですが
パソコン診断機能が付いていません!
(後期型のBF130A2はパソコン診断できます)
代わりについている自己診断機能を働かせてみますが、
なにも故障の診断が出ません。
仕方なく、当時発売されていた診断機の代わりの
「テストハーネス」というのを繋いでシコシコと
各回路の電圧を、暑い日ざしの中、計測していくのでした。
サービスマニュアルには
「キーをOFFにしてA14とA35間の電圧が●●Vあるか」とか
「キーをONにしてA・・・」
と、頻繁に書かれています。
一人でエンジン前運転席をそのたびに往復していたら
何時間掛かるかわからないのでAさんをつれて来ました。
Aさんに「次キーON]「次はキーOFF」とか繰り返し数十分、
正常なまま、どんどん時間は過ぎていきます。
で、一旦Aさんにリセットを頼もうと、
「セーフティースイッチを押して」と頼むのですが
「Hさん、出来ません」と言うので、
「もう~」とか、あまりの暑さに汗をポタポタ滴れ、イライラしながら
運転席に行くとたしかに、押せません。
「何で何で・・・あああああああああああぁ~」
クリップの厚みが変で、ボタンが完全に飛び出していません。
これではリセットできない(スイッチがカットOFF)です。
クリップを「グイッ」と無理に押し込むと
正常に飛び出してセーフティースイッチが「ON」になります。
エンジンが始動できる、正常の状態です。
6回目のクルマへの往復をして、念のため持って来ていた
イグニッションスイッチアッセンブリーからセーフティーコードを
外して、フネに持っていきます。
Honda純正のクリップを取り付けると・・・
こんな感じです。
違和感の無い、正規のセット具合です。(当たり前ですが)
リセットも出来ました。
で、そうなんです。
なぜかYamaha船外機用のセーフティークリップ(コード)が
使われていたのでした。(外れているのがHonda用)
「ひょっとして、これが原因」
当日、その場にいなかったので、状況は絶対かわかりません。
とりあえずここは改善し、テスター作業を続けました。
結局、問題は出ませんでした。
分解していた部品を元に戻し、桟橋で数十分試運転します。
問題は出ません。
最後に、造船所の社長さんに言って、オーナーが何度もエンジンが
停止したという海上試運転に、恐る恐る出港します。
あまりに離れてエンジンがSTOPしたら大変なので
試運転しても問題が無いギリギリのところで
全開にしたり、引き波を飛び越えてショックを与えたり、
約30分~40分、ひたすら走り回ります。
途中でAさんに運転を代わって、私はエンジンのそばで
異常が無いか確認します。
エンジンは、タペットの音や他に少し気になる音はしますが、
使用に問題は無く、「シレっ」と動き続けます。
Aさんが
「あの船の形をした建物はなんですか」と聞くので
試運転ついでに少し近寄って
「あれはY社系の●●●マリンさんという超一流のマリーナさんです」と
説明します。
Aさんは、こちら方面はあまり来ないのですね。
その間もBF130AXは「快調」回ります。
このまま続けても何も出ないということで帰港します。
着岸で手伝ってもらった隣のボートオーナーさんは一部始終を見ておられ
「直ったな!」と太鼓判を押してくれます。
造船所の社長さんにも説明したら、「コードか・・・・」
いや、まだ絶対とは言えないんですけど・・・でも、
他にすることも残っていません。
ボートを片付けて、クルマに工具や診断機械を直すと
12:30でした。(工賃は4.5時間です。)
お昼でも、造船所の社長は嫌な顔一つせず
「手はこっちで、この石鹸で洗ろたらええよ」と
大先輩様、大変恐縮でございます。
帰りにAさんと少し遅い昼食に第一旭ラーメンを食べて
帰路につきました。
また、顔と手だけ日焼けしました。
足も日焼けしたい、今日この頃です。
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